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第10回環境サロンは「村野藤吾と宇部」と題して、脇彌生さんにお話していただきました。

2017年01月22日

第10回環境サロンは「村野藤吾と宇部」と題して、脇彌生さんにお話していただきました。エコハ券の申請に際して、環境とは無関係ではないかと担当係から言われましたが、建築物は都市環境や景観の重要な部分を構成しています。

脇さんは平成3年ふるさとコンパニオン養成講座を受講して以来、村野藤吾の建築のファンになり、堀正昭さんの講座を受けたり、ご自分でも勉強されてこられました。

そもそも村野藤吾が宇部と関わるきっかけは、松尾橋梁の松尾社長が俵田明に村野を紹介したことからはじまります。二人は意気投合し、以来、宇部に8つもの建物が建てられます。この他にもゴルフクラブハウス、図書館、労働会館、セメント工場、商工会議所等々の計画も練られていて、数多くの設計図も残されているそうです。

うち、宇部油化工業の建物は戦災で焼失し、宇部興産旧本社は道路建設計画に伴って、取り壊されました。渡辺翁記念会館、宇部銀行(現ヒストリア宇部)、宇部市文化会館、宇部興産ビルは町の中心部にあり、良好な都市景観の形成に大きな貢献を示しています。

脇さんは、村野藤吾はル・コルビジェの影響を受けていると考えていると言うことで、彼が提案した、1)ピロティ(柱だけで構成された吹き抜け)、2)屋上庭園、3)自由な平面、4)横長の窓、5)自由な正面(ファザード)の要点は、村野藤吾の作品にも使われているとのことです。

建築物の細部にわたって、工夫が凝らされており、間接照明、優美な螺旋階段、玄関のレリーフ、外壁の落ち着いた塩焼きタイル、明かり取りを兼ねたガラスブロック、角が取れた階段など、よくみれば、味わい深いものであることがわかる。

村野藤吾は若かりし頃八幡製鉄で働いていた関係で、工場でも文化的なものがあってほしいという気持ちがあったのであろうか。

宇部窒素工場事務所は昭和16年完成であるので、物資不足の中で建てられたこともあるかもしれないが、部分的に竹が使われているとのことである。

宇部興産中央研究所の玄関車止めの天井は上にそった特徴ある形をしている。

村野藤吾最晩年の作品である宇部興産ビルは、大きな国際会議場も造られ、それを支える大きな円柱の中にはそれぞれ、緊急避難用のらせん階段が設けられているということである。

宇部市民が村野藤吾の建築物をどう感じているか、とられたアンケートの中で、彼の建築物が宇部にあることの誇り、メリットについて聞いたところ、時代の雰囲気を感じさせる記念物、鉱業の町に文化的なものを与える、歴史の重みをかんじさせる、構造物に美しさの要素が重要といった意見があった。

脇さんは、お話の最後に、「公害のまちから環境都市となった宇部市の文化性は、建築物にもあるのではと感じます。」 とされています。
冒頭仁もふれたたように、建築物は文化性を表すとともに、都市美を構成する重要な要素であり、もっとその観点が社会的に認識されるべきであると思われます。

質疑では
・村野は、建築家は99%建主や社会的な条件を受け入れた後で、1%残った部分で自分らしさを表現するという信念をもっていたらしい。
・地下室の結婚披露宴への利用など復活させたらどうか。
・若い人達の意見を反映させたらいい。
・興産ビルの国際会議場の下は今は駐車場になっているが、もともとは噴水があった。夜は照明が当てられてきれいだった。
・音響がいいのでN響の岩城宏之さんは渡辺翁記念会館の音響を非常に気に入り、何度も演奏する機会をつくってもらったようだ。
・音響については、つくってみないとわからないとも言われている。
・早稲田大学の佐藤教授に相談してつくったということだ。一般に音響はかたい構造が良いとされている。
・説明を受けなければ、見過ごして気づかないことが一般的であるが、「見どころマップ」をつくって、今日のお話の内容を盛り込めば、観光にも役立つのではないだろうか。
等の意見があった。

全体に、お話の内容は初めてのことが多く、参加者は満足されていたようである。

なんとなく気ぜわしく、余裕のない世の中、ゆっくり心落ち着けて、建築物の良さを味わう気持ちをもちたいものだといます。(文責:浮田)

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